2025.08.30
カテゴリ:法務/労務管理/規制
タグ:ノウハウ
通勤バスは距離によって手当の非課税額が変わる?税金に関する考え方を解説「通勤バスを使っているけれど、距離によって手当の額が変わるのか分からない」
「会社の規程でどこまで支給されるのか分からない…」
人事や経理の担当者、経営者の方からは、こうした疑問の声がよく聞かれます。実際、通勤バスの費用と距離の関係を正しく理解していないと、社員への説明や規程づくりでトラブルになることもあるでしょう。
本記事では、通勤バスの非課税限度額の決まり方、距離が関係するケースと関係しないケースの違い、さらに企業が独自に設けられる距離基準の例までを整理します。「通勤バス手当と距離の関係を正確に把握しておきたい」と思っている方は、ぜひ最後までご覧ください。
通勤バスの非課税手当は距離で変わるのか?
「通勤バスの非課税手当は通勤距離に応じて決まる」と考えている人もいますが、通勤バスの非課税額は距離とは無関係に決まります。通勤距離と非課税手当の関係について詳しく解説します。
通勤バスの非課税額は距離に左右されない
バスや電車を利用する通勤手当の非課税限度額は、通勤距離ではなく「実際に支払う運賃」をもとに決まります。自宅から職場までの通勤で、最も経済的かつ合理的なルートの運賃が、そのまま非課税の対象となるのです。
例えば、往復で1日500円のバス代がかかる場合、1ヶ月(20日勤務)であれば10,000円が非課税限度額となります。通勤距離が短くても長くても変わらず、あくまで支払う運賃が基準です。このルールは、公共交通機関の利便性を考慮したもので、利用者が実際に負担する費用を適切に補填することを目的としています。
通勤バスや電車は距離という物理的な制約を受けず、かかった費用が非課税の対象となるため、通勤手当の計算が比較的シンプルになります。
マイカーや自転車通勤では距離に応じて非課税額が決まる
マイカーや自転車、原動機付自転車などを通勤に使う場合の非課税限度額は、通勤する片道の距離によって決定されます。 公共交通機関のように運賃が発生しないため、距離を基準に燃料費や維持費などが考慮されているのです。
たとえば、片道2km未満では非課税額はありませんが、片道10km以上15km未満なら月額7,100円、15km以上25km未満なら月額12,900円と、距離が長くなるにつれて段階的に非課税限度額が増えていきます。
マイカーや自転車と通勤バスを併用している場合は、それぞれの非課税限度額を合算して計算されます。たとえば、バスとマイカーを組み合わせて通勤している場合、バス運賃分とマイカーの距離に応じた非課税額の合計が、税法上の上限となります。
通勤手段によって非課税額の計算方法が異なる点を理解することは、企業の給与計算や通勤手当規程の策定において非常に重要です。
いずれの場合も非課税額の上限は月15万円
通勤手当の非課税額には、通勤手段にかかわらず15万円の上限が設定されています。
公共交通機関のみの場合はもちろん、公共交通機関とマイカーや自転車などを併用した場合でも、上限は15万円です。
なお、15万円を超える通勤手当を支給できないわけではありません。あくまで税法上の非課税限度額であり、15万円を超える通勤手当は従業員の所得として課税対象となります。
通勤距離の測定と合理的経路の考え方
通勤距離の測定と合理的経路の考え方についても知っておきましょう。以下で詳しく解説します。
通勤距離は「片道」を基準に測定
通勤距離を算定する際は、往復ではなく自宅から職場までの片道距離を基準とするのが原則です。最も経済的で合理的なルートを片道で測ることが重要です。
特にマイカーや自転車で通勤する場合、距離の測定方法を明確にしておくことが、従業員間の公平性を保つ上で不可欠です。一般的には、Google MapsやYahoo!地図などのオンライン地図サービスを利用して距離を測定することが推奨されます。これらのサービスは、誰もが同じ基準で距離を測定できるため、客観性が高く、公平な手当支給につながります。
たとえば、社内規程で「通勤距離はGoogle Mapsで最短ルートを測定した片道距離を適用する」といった具体的なルールを定めておくと、従業員との不要なトラブルを防ぐことができるでしょう。また、直線距離ではなく、実際の道路に沿った距離(実走行距離)を採用する企業も多くあります。
統一された測定方法を導入することで、給与計算や経費精算の手続きがスムーズになり、管理者側の業務負担も軽減されます。
「最も経済的かつ合理的な経路」とは何か
通勤手当の計算で用いられる「最も経済的かつ合理的な経路」とは、運賃が最も安く、かつ一般的に通勤で利用される妥当なルートを指します。単に最短ルートであれば良いというわけではなく、特急料金や新幹線料金などの特別な運賃を支払う経路は、原則として認められません。
例えば、同じ区間を移動するのに、普通列車で1時間かかるところを、特急列車で30分に短縮できる場合でも、特急料金分は通勤手当の非課税額には含まれません。
合理的な経路とは、多くの人が日常的に利用する、時間的にも経済的にもバランスの取れた経路です。遠回りをして通勤手当を増やすような行為は認められず、税務調査の対象となる可能性もあります。
そのため企業は、通勤手当の申請時に「合理的経路」の考え方を従業員に分かりやすく説明し、理解を求める必要があります。
社内規程に明文化してトラブルを防ぐ
通勤手当に関するトラブルを未然に防ぐためには、社内規程に具体的なルールを明文化しておくのが効果的です。 支給基準が曖昧だと、従業員間で不公平感が生じたり、経費精算のたびに個別の判断が必要になったりして、業務が滞る原因になります。
例えば、「通勤距離はGoogle Mapsの『自動車』または『自転車』ルートで測定し、実走行距離を適用する」「公共交通機関を利用する場合は、最も運賃が安い経路を基本とする」といった具体的なルールを定めることで、誰が計算しても同じ結果になるようにしておきましょう。また、転居や通勤経路の変更があった場合の届け出方法や、虚偽の申請に対する罰則なども明記しておくことで不正を防止できます。
社内規程は、単なるルールブックではなく、従業員との信頼関係を築くための重要なツールです。定期的に見直しを行い現在の状況に合わせて更新していくことで、より良い制度を維持できます。
通勤バスの手当に関する企業独自の距離に関する判断
通勤バスの手当に関しては、企業が独自に距離基準を定めることも可能です。ここでは、企業がどのように通勤距離を判断して手当を設定できるかについて解説します。
法令上の制限はないが、企業独自の判断は可能
通勤バスを利用する場合の通勤手当の非課税額は、税務上は「運賃ベース」で判断され、法令上は距離による制限はありません。
しかし、これはあくまで税法上の話であり、企業が自社の就業規則や通勤手当規程で独自の基準を設けることは可能です。通勤手当は法律で義務付けられたものではなく、福利厚生の一環として任意で支給されるものであるためです。たとえば、自宅から最寄りのバス停や駅までの距離が短い場合には、手当を支給しないといった独自ルールを設けることもできます。
ただし、独自のルールを定める際には、その内容を就業規則に明記し、従業員に周知徹底することが重要です。
「自宅から駅までの距離」を基準に手当を支給するケース
通勤手当を支給する際に、「自宅から最寄り駅やバス停までの距離」を基準にする企業もあります。これは、公共交通機関を利用する従業員に対して、手当の支給をより合理性を高めるために導入されることが多い考え方です。
たとえば、社内規程で「自宅から最寄り駅までの距離が1km未満の場合は徒歩通勤を想定し、バス代は支給しない」と定めるケースがあります。この場合、1km以上離れている従業員には、区間のバス代を支給する仕組みになります。
このように設定することで、企業の交通費負担を抑えながら、本当に交通機関を利用する必要がある従業員だけに手当を支給できる、公平な制度を作ることができます。また、従業員にとっても、明確な基準があることで、安心して通勤手段を選べます。
ルールを運用する際は、距離の測定方法を具体的に定めておくことが大切です。こうすることで、従業員との認識のずれを防ぎ、スムーズな運用が可能になります。
「自宅から会社までの距離」で手当支給を決める例
通勤手当の支給基準として「自宅から会社までの総通勤距離」を判断材料にする例もあります。
例えば、マイカー通勤の場合と同様に、自宅から会社までの距離が2km未満の従業員には手当を支給しないといったルールを設けることがあります。この考え方は、マイカー通勤とバス通勤の公平性を保つためにも有効です。
通勤手当の基準を「自宅から会社までの距離」に統一すれば、通勤手段にかかわらず同じ基準で計算でき、従業員間の不公平感をなくすことができます。
企業の状況や地域の特性に合わせて、最適なルールを策定することが重要です。
通勤バス手当の距離ルールは整理しておこう
通勤バスの手当は「距離で決まる」と誤解されることがありますが、法令上、バスや電車のみを利用する場合の非課税額は、距離ではなく実際の運賃を基準に算定されます。
一方で、マイカーや自転車通勤、またはそれらをバスと併用する場合には、片道距離に応じた非課税枠が適用されます。いずれの場合も非課税限度額の上限は月15万円です。
通勤距離の計算では「片道距離」や「最も経済的かつ合理的な経路」が基準となります。統一ルールを設けて社内規程に明文化することがトラブル防止につながります。さらに、企業は独自に「自宅から駅までの距離」や「自宅から会社までの距離」を基準に、手当支給の可否を決めることも可能です。
ぜひ自社の通勤手当規程を見直し、根拠ある制度を整備することで、社員の納得感と業務の効率化を実現しましょう。