2025.10.18
カテゴリ:セミナー
タグ:安全対策
手足に障害があっても運転できる車とは?3つのタイプを紹介「足の操作が難しくて運転を諦めている」「どんな改造なら安全に走れるのか分からない」「市販車で対応できるのか不安」
こうした悩みを抱えている方も多いでしょう。しかし、障害があっても運転できる車も少なくありません。
この記事では、手足に障害があっても運転できる車を3つのタイプに分けて紹介。さらに、改造に対応しやすい車種や、利用できる助成・補助金についても紹介します。
手足に障害があっても運転できる車は主に3タイプ
身体の状態に合わせて運転を再開したいと考える方は少なくありません。しかし、「どんな車なら安全に運転できるのか」「改造は必要なのか」と悩む方も多いでしょう。結論から言えば、手足に障害があっても運転できる車は主に次の3タイプに分類されます。それぞれの特徴や対応装置について解説します。
- 手動運転装置付き
- 足動運転装置付き
- 運転支援・自動運転機能を活用するタイプ
手動運転装置付き(上肢が使える・下肢に障害がある方向け)
足での操作が難しい場合に、アクセルやブレーキを手で操作できるよう改造したタイプです。上肢が使える方であれば、通常の運転に近い感覚で走行できます。代表的な装置としては、次のようなものがあります。
手動アクセル・ブレーキレバー |
ハンドル横に設置し、引く・押す動作で加減速を行う |
ハンドル旋回ノブ |
片手でもハンドル操作を容易にする補助具 |
左足アクセル装置 |
右足の操作が難しい場合にアクセルを左側に設置 |
こうした装置は操作の負担を減らすだけでなく、反応速度の向上や安全運転の安定化にも寄与します。さらに、座席位置やレバー配置の調整によって、腕の可動範囲や筋力に合わせた最適な環境を構築できます。
足動運転装置付き(下肢が使える・上肢に障害がある方向け)
上肢の障害によりハンドル操作やシフト操作が難しい方向けに設計されたタイプです。足やその他の身体部位で主要操作を行う仕組みが採用されており、機械的な補助と電子制御を組み合わせて安全な運転を支援します。主な機能には次のようなものがあります。
足操作式ハンドル |
ペダルやフットコントローラーで方向転換が可能 |
音声操作システム |
ハンドルボタンの代わりに音声でウインカーやワイパーを操作 |
電動シフト・電子制御パネル |
軽いタッチ操作でギアチェンジを実行 |
これらの機能は、ドライバーの操作精度を補い、体の負担を大幅に軽減します。
特に近年は電子制御技術の進化により、足操作や音声操作の反応速度が向上しているため、腕の動きに制限がある方でも安定した走行を実現できます。安全性を重視する方や、長距離運転を行う方にも適したタイプです。
運転支援・自動運転機能を活用するタイプ
重度の障害がある方でも運転を補助できるよう、先進的な運転支援技術(ADAS)を搭載した車も増えています。このタイプは「改造車」ではなく、メーカー純正の安全支援システムを利用して運転を支援する仕組みです。代表的な機能は次の通りです。
自動ブレーキ・車線維持支援(ADAS) |
危険を検知し自動で回避 |
ハンズフリー運転支援 |
特定条件下でステアリング操作を自動制御 |
音声・タッチ操作によるナビ・車内制御 |
体の負担を減らし、直感的に操作可能 |
これらの技術は、障害の程度を問わず「安心して運転できる環境」を実現しています。
特に、認知・操作負荷を軽減するシステムは、体力や筋力の低下がある方にも有効です。将来的には、完全自動運転技術の普及により、より多くの人が自由に移動できる社会の実現が期待されています。
手足に障害がある人向けに改造できる市販車種の例
障害のある方が利用しやすい車は、必ずしも特殊車両だけではありません。多くの市販車をベースに改造できるため、デザインや走行性能を妥協せずに自分に合った車を選べます。
ここでは、主要メーカー別に改造実績のある車種を紹介します。
トヨタ
トヨタは福祉車両ブランド「ウェルキャブ(Welcab)」を展開し、改造対応の柔軟性が高いことで知られています。主な対象車種は次の通りです。
プリウス/カローラシリーズ |
ハイブリッド車でも改造対応可能。手動運転装置の装着実績が豊富 |
ヤリス/アクア |
コンパクトで取り回しが良く、運転再開時にも扱いやすい |
ノア/ヴォクシー/アルファード |
車いす収納や助手席リフトアップ仕様に対応 |
全国の「ウェルキャブ ステーション」では、運転補助装置付き車の展示・体験・相談が可能です。操作性や座席配置を確認したうえで改造プランを立てられるため、失敗のない車選びができます。
日産
日産は「ライフケアビークル(LV)」シリーズを展開し、改造ベースとして高い人気があります。EV(電気自動車)にも対応しており、技術的な信頼性が強みです。代表的な車種は以下の通りです。
ノート/リーフ |
電動車両でも手動アクセル・ブレーキ装置を装着可能 |
セレナ |
ミニバン型で収納力・乗降性ともに優秀 |
エルグランド |
車いす移動車や運転補助装置の取り付けに適した構造 |
近年は電動車特有の制御系統にも対応できる認定改造業者が増えており、EVユーザーにも安心して選ばれています。
ホンダ
ホンダは利用者の身体状況に合わせた「テックマチック車」シリーズを長年展開しています。改造の自由度が高く、幅広いニーズに対応できます。代表的な車種は次の通りです。
フィット/フリード |
操作装置の追加や位置調整が容易で、人気の高いベース車 |
ステップワゴン |
ファミリー利用と安全補助を両立 |
N-BOX |
軽自動車ながら操作スペースを十分に確保可能 |
ホンダの福祉車両相談窓口では、障害内容に合わせたカスタマイズ提案が受けられます。初めての改造や再運転にも適したメーカーです。
スズキ・ダイハツ
軽自動車は維持費を抑えつつ、運転の自由を取り戻したい方に人気です。特にスズキとダイハツは、改造対応モデルの実績が多いメーカーです。
例えばスズキであればスペーシアやハスラー、ダイハツであればタントやムーヴなどの車種は、小型ながら手動運転装置や旋回ノブの設置が可能です。
ただし、ペダル配置やステアリング位置に制約があるため、改造業者への事前相談は欠かせません。試乗と設計相談を並行して行うことで、安心して導入を進められます。
利用できる助成・補助金の例
改造や購入には一定の費用がかかりますが、国や自治体の助成・補助制度を活用すれば負担を大きく減らせます。ここでは、代表的な3つの制度を紹介します。
自動車改造費助成制度
最も一般的な支援が、自治体が実施する「自動車改造費助成制度」です。身体障害者手帳を持つ方が、自ら運転できるように車を改造する場合に適用されます。
対象者例
- 身体障害者手帳(1〜4級程度)を所持している方
- 自ら運転する目的で改造する方
- 就労・通学・社会参加に車が必要な方
助成対象となる改造
- 手動アクセル・ブレーキレバー
- 左足アクセル装置
- ステアリング旋回ノブや電動シフト
- 車いす収納リフト など
助成の対象は自治体によって異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。また、助成の金額も自治体によって異なります。多くの場合改造後の申請は対象外となるため、必ず事前に申請を行ってください。
自動車税・自動車取得税の減免制度
本人または同居家族が使用する車については、税金の軽減措置が受けられます。対象税目は「自動車税」「自動車取得税」「軽自動車税」の3種類で、以下のような場合に減免が受けられます。
- 本人が運転する車
- 通院・送迎目的で家族が運転する車
新車・中古車どちらであっても対象です。基本的には1人1台までが原則とされています。制度の適用範囲は自治体によって異なるため、細かい部分は事前に問い合わせておくとよいでしょう。
自動車購入費の助成制度
一部の自治体や社会福祉協議会では、車の購入そのものを支援する制度があります。特に「就労継続」や「社会復帰」を目的とする場合に対象となることが多いため、チェックしてみてください。例えば、次のような場合に制度を利用できる可能性があります。
- 通勤のための自家用車購入補助
- 改造済み中古車の購入費補助
- 地域参加促進のための助成
支給金額や条件は自治体によって異なります。まずは地元の福祉課で制度の有無を確認し、必要書類を揃えましょう。
自分に合った車で自由に移動しよう
障害があっても、運転の選択肢は確実に広がっています。改造技術や支援制度の発展により、自分に合った車を選び、安全に運転を再開できる時代です。
まずは、自治体の福祉課やメーカーの相談窓口に問い合わせてみてください。改造プランや助成制度の組み合わせを確認することで、最適な解決策が見つかります。
専門家と相談しながら、安全で快適なドライブを実現しましょう。