2025.12.12
カテゴリ:安心/安全/教育
タグ:安全対策
社員の飲酒運転による会社への影響とは?具体的な損害と対策法を解説社員の飲酒運転は、懲戒や免停といった「個人の問題」にとどまらず、会社の法的責任や金銭的損失、取引先との関係悪化にもつながり得る重大な経営リスクです。特に忘年会シーズンは、社内行事や取引先との会食が増え、「業務と私的な飲酒」「社用車とマイカー」「就業時間内と時間外」の境目があいまいになりやすくなります。
その結果、「会社としてどこまで責任を負うのか」「どの程度まで管理すべきか」を判断しきれず、ルールづくりや運用が後回しになっている企業も少なくありません。しかし、事故が起きてから対応を考えるのでは遅く、平時からリスクを具体的に把握しておくことが重要です。
本記事では、社員の飲酒運転が会社にもたらす影響を、法的責任・金銭面・業務への影響・企業イメージの観点から整理したうえで、忘年会シーズンに実施すべき具体的な対策を解説します。自社の現状を見直す際のチェックリストとして活用してみてください。
飲酒運転の会社への影響とは
社員が飲酒運転をした場合、個人のみならず会社にも影響が及ぶ可能性があります。まずは、社員の飲酒運転が会社に与えるリスクを解説します。
飲酒運転に関する法的責任
飲酒運転が発生した場合、会社は「知らなかった」では済まない可能性があります。飲酒運転が発生した状況によっては、道路交通法や安全配慮義務など、企業側にも一定の責任が及ぶ可能性があるためです。
例えば、従業員が業務中に事故を起こした場合、会社が運転状況を適切に把握していなかった点が問われることがあります。特に忘年会シーズンは、私用・業務の境界が曖昧になりやすく、管理が緩んだ隙に事故が発生しやすい時期です。
そのため、企業として事前にリスクを把握し、飲酒後の移動を含めた行動を明確に管理する必要があります。法的トラブルを避けるためにも、従業員が運転する状況を平時から可視化しておくことが重要といえるでしょう。
企業に求められる使用者責任
会社には「使用者責任」と呼ばれる、従業員の行為に対して一定の責任を負う民法上の義務があります。これは業務中の事故に限らず「業務と一定の関連がある行動」にも及ぶことがあるため注意が必要です。
忘年会のような社内行事はまさにその典型で、勤務時間外であっても企業主催と判断されれば事故時に会社が賠償責任を問われる可能性があります。さらに、管理職が飲酒を促した場合や、代行手配などの安全確保を怠った場合には、監督義務違反として指摘されるケースもあります。
そのため単に「飲酒運転は禁止」という注意だけでなく、「運転させないための仕組み」を整えることが欠かせません。
社用車利用時のリスク
社用車を運転する従業員が飲酒した場合、会社側の責任はさらに重くなります。
会社は社用車の管理者としての責務が法令で明確に位置づけられており、点呼・アルコールチェック・運行記録などの適切な管理が求められるためです。管理体制が不十分なまま事故が発生すると「管理責任が果たされていない」と判断され、多額の賠償や行政処分につながる場合があります。
忘年会シーズンには、昼間は社用車を使用し夜に会食へ向かうケースも多く、運行と私的行動が連続しやすい点が隠れたリスクです。
こうした状況に備えるには、社用車での来場禁止や飲酒予定日の使用制限など、事故を未然に防ぐ運用ルールの徹底が重要です。
マイカー通勤時のリスク
マイカー通勤を認めている会社は、飲酒運転のリスク管理が難しくなります。
従業員が私有車で通勤する場合であっても、会社は就業時間前後の事故が「通勤災害」や「業務関連」と判断される可能性を踏まえておかなければなりません。特に忘年会の翌朝は「残存アルコール」が原因で事故が起こりやすく、本人が自覚していない状態でも法的基準を超えているケースがあります。
こうした見落としが会社の管理不足と評価されれば、損害賠償や社会的信用の低下につながります。事前チェックや通勤ルートの申請など、マイカー通勤者への運転管理を強化することで、リスクを抑えられるでしょう。
飲酒運転が会社にもたらす具体的な損失
飲酒運転は、会社に次のような損失を与える可能性があります。それぞれ、詳しく解説します。
- 損害賠償に伴う金銭的負担
- 保険料増加や補償対象外となるリスク
- 業務停止や人員欠員による生産性低下
- 企業イメージ低下による取引への影響
損害賠償に伴う金銭的負担
飲酒運転の事故が発生すると、会社は多額の損害賠償を求められる可能性があります。業務関連性が認められれば、企業も「加害者側の一部」とみなされるためです。
賠償には治療費・慰謝料・逸失利益などのほか、場合によっては企業の運転管理の不備が加算要因として判断されることもあります。さらに、従業員一人の過ちが長期的な財務負担につながり、設備投資や採用活動に影響を及ぼすケースも見られます。
冬季は道路環境が悪化するうえ、忘年会による飲酒機会が増加し事故率が高まる時期です。繁忙期に損失が集中すれば経営にも影響が出るため、金銭的リスクを把握したうえで予防策を講じることが欠かせません。
保険料増加や補償対象外となるリスク
飲酒運転による事故は、保険の適用が大きく制限される点が問題です。
多くの商用車保険では「飲酒運転は補償対象外」とされ、結果として企業が負担すべき費用が跳ね上がります。また、事故歴がつくことで翌年度の保険料が大幅に増加し、長期的なコスト増を招きます。
忘年会シーズンは「つい一杯だけ」の気の緩みから事故が発生しやすく、事故後に保険が使えないことで初めて重大さに気付くケースも少なくありません。予算管理を担う担当者にとって、保険適用外の支出は予測できない痛手となり、財務計画の見直しを迫られます。
事故後の負担ではなく、事故そのものを減らす仕組みづくりが求められるでしょう。
業務停止や人員欠員による生産性低下
事故が起きれば、従業員本人だけではなく、チーム全体の業務が滞ります。
負傷による長期離脱や、警察対応・社内調査などの膨大な手続きが発生し、現場の負担が急増します。特に年末は案件が集中し納期調整が難しいため、欠員が生産性に直結するケースもあるでしょう。
また、管理職は再発防止策の策定や取引先への説明対応に追われ、本来の業務に割ける時間が減少します。結果として、ミスの増加や判断の遅れなど、二次的な影響も生まれやすくなります。
飲酒運転は単なる個人の問題ではなく、組織全体の運営を揺るがす事態につながり得るため、防止するため事前の仕組みづくりが欠かせません。
企業イメージ低下による取引への影響
飲酒運転の事故は、企業イメージを一気に損なうリスクがあります。報道やSNSで情報が拡散すれば、「安全管理の甘い会社」と見なされ、既存取引先からの信頼が揺らぎます。
特にBtoB企業では、取引方針の変更や入札参加資格の見直しなど、具体的なビジネス機会の損失につながる可能性があるでしょう。
忘年会シーズンは事故報道が増えやすく、社会の目が厳しくなる時期です。こうした状況で自社が事故を起こせば「対策が不十分だったのでは」という疑念を持たれます。信用の回復には時間がかかり、その間に競合へ顧客が流れることもあります。
企業イメージを守るためにも、事故を未然に防ぐ統制の徹底が必要です。
忘年会シーズンの飲酒運転対策
忘年会シーズンには、次のような飲酒運転対策を行うとよいでしょう。それぞれ、詳しく解説します。
- 参加前の注意喚起
- 当日の交通手段の事前確保
- 会の終了後のフォロー
- 取引先との会食時の管理
参加前の注意喚起
忘年会シーズンは業務負荷が高まり、判断が甘くなりやすい時期です。
そのため、事前の注意喚起が最も効果的です。単なる「飲酒運転禁止」の通達だけでは不十分で「翌朝の残存アルコールの危険性」や「具体的な事故例」を提示することで、従業員が自分ごととして捉えやすくなります。
また、管理職が先にメッセージを発信することで組織としての方針が明確になり、場の空気に流されにくくなります。加えて、飲み会への車での来場禁止や、翌日の運転業務の制限など、行動ベースのルールも示すと効果的です。
注意喚起は単なる形式ではなく、事故を防ぐための「事前教育」として機能させることが重要です。
当日の交通手段の事前確保
飲酒運転の多くは、「代行を呼ぶのが面倒」「終電を逃した」など、当日の判断に依存することで発生します。事故を防ぐためには、飲酒前の段階で交通手段を確保しておく仕組みが有効です。
たとえば、会社がタクシーチケットを支給したり、最寄り駅までの送迎を設定したりすることで、従業員が迷わず安全な手段を選べます。また、幹事が交通手段を案内することで参加者全体の意識が統一され、飲み会中の急な予定変更にも対応しやすくなります。
冬場は天候の影響で運行の乱れも起きやすいため、複数の帰宅ルートを提示しておくと安心です。事前確保は、事故を起こさない選択を組織として用意する取り組みといえるでしょう。
会の終了後のフォロー
忘年会は解散後が最も事故が起きやすい時間帯です。そこで、終了後にフォロー体制を設けておくことで、リスクを大幅に下げられます。
具体的には、幹事や管理職が退店時に声かけを行い「車で来ていないか」「代行を利用するか」などをその場で確認する方法が挙げられます。さらに、翌朝に運転予定がある従業員には、残存アルコールの注意喚起を再度通知することで、朝の事故を防止できるでしょう。
こうしたフォローは、従業員の安全だけでなく、企業としての管理姿勢を示す役割も果たします。形式的なチェックではなく、リスクが高まる時間帯を見据えた最後の安全確認として位置づけることが重要です。
取引先との会食時の管理
取引先との会食は社内の忘年会よりも管理が難しく、飲酒運転のリスクが潜みやすい場面です。相手に配慮するあまり、飲酒量や帰路の確認が後回しになることがあり、事故発生時には「企業としての統制が不十分だった」と評価される場合があります。
そのため、会食の参加前に「運転禁止」「代行推奨」などの基本方針を必ず共有し、担当者が判断しやすい状態を整えることが重要です。また、取引先が飲酒している場合でも、従業員が車で送迎する行為は重大なリスクとなるため、禁止事項として明確に示しておく必要があります。
ビジネスの場だからこそ、礼儀と安全を両立させる運用ルールが求められるでしょう。
飲酒運転を防ぐための体制作りを
飲酒運転は個人の問題にとどまらず、会社の法的責任・金銭的損失・業務停滞・企業イメージの低下など、多方面に影響を及ぼします。従業員個人の問題だと考えていると、思わぬ損害が発生するかもしれません。
特に忘年会シーズンは事故リスクが高まるため、事前の教育、当日の運用、終了後のフォローまで一貫した対策が不可欠です。この記事を参考に、社員の飲酒運転を防ぐための体制作りを始めてみてください。



























