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自動車運行管理ラボ

2025.12.14

カテゴリ:法務/労務管理/規制

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通勤送迎バスを運行するために知っておくべき法律は?法令遵守のポイントも

人手不足解消や従業員の利便性向上のために、通勤送迎バスを導入したいと考えている企業も多いでしょう。

ただし「とりあえず駅と工場を往復するバスを走らせればよい」と考えてしまうと、思ったほど採用や定着に効かない、コストばかり膨らむ、といった状態に陥りがちです。どのエリアから何人を運びたいのか、運行を自社で担うのか外部に任せるのか、誰を対象にするのかといった設計の仕方によって、効果もリスクも大きく変わります。

本記事では、まず通勤送迎バスが担う役割を整理したうえで、運行形態の考え方と対象者の決め方を解説します。自社の採用課題や人員構成をイメージしながら読み進めていただくことで、「自社にとって本当に意味のある通勤送迎バスの姿」が具体的に描けるようになるはずです。

通勤送迎バスとは

通勤送迎バスは、駅や自宅と事業所をつなぐ「通勤動線」を会社側で整える仕組みです。単にバスを走らせる施策ではなく、「どのエリアから、どの時間帯に、どのくらいの人数を運びたいのか」という通勤の実態に合わせて設計する必要があります。

ここでは、通勤送迎バスが果たす役割と運行形態・対象者の決め方という3つの観点から解説します。

通勤送迎バスの役割

通勤送迎バスは、単なる福利厚生ではなく「人が集まりにくい職場に人を集めるための仕組み」として機能します。最寄り駅から徒歩では通いづらい工場や物流拠点、郊外型オフィスなどでも、駅と職場を結ぶバスを用意することで、通勤時間と体力の負担を抑えられます。

その結果、応募段階で「通えないから候補外になる」人材を取りこぼしにくくなり、採用母数の拡大につながりやすくなるでしょう。また、悪天候の日やダイヤが乱れやすい時間帯でも通勤経路が安定するため、遅刻や欠勤が減り、現場のシフト調整やライン停止のリスクも抑えられます。

子育て中の従業員や高齢の従業員にとっても、乗り換え回数が減ることは安心材料になり、結果として定着率の向上にも寄与しやすい施策といえるでしょう。人手不足が続くなかで、給与だけでなく「通いやすさ」を提示できることは、求人票の説得力を高めるポイントにもなります。

通勤送迎バスの運行形態

通勤送迎バスの運行形態は、大きく「自社で車両とドライバーを用意する方法」と「バス事業者に運行を任せる方法」に分かれます。

自社運行の場合、車両選定、リース・購入の判断、駐車スペースの確保、ドライバー採用やシフト管理など、社内で握るべき業務が多くなりがちです。その代わり、始業・終業時刻の変更や増便の調整など、現場の事情に合わせたダイヤ変更を行いやすい側面があります。

一方、バス会社へ委託する場合は、車両整備や点検、運行管理などを事業者側が担うため、社内の負担は軽くなりますが、ダイヤやルート変更には事前調整が必要な場合もあります。

導入前には「どこまで自社で抱えるのか」「どこから外部の専門性を活用するのか」を切り分けることが、運行開始後のトラブルを防ぐ重要なポイントです。

通勤送迎バスの対象範囲

通勤送迎バスを企画する際は、「誰を対象にするのか」を最初に決めておくことが重要です。正社員だけなのか、契約社員・パート・アルバイト・派遣社員まで含めるのか、協力会社の常駐スタッフも乗車可能にするのかによって、公平性の議論やコスト負担の印象が変わります。

また、対象範囲は法的な扱いにも影響します。自社従業員のみを無料で送迎するのであれば、自家用車による送迎として整理しやすい一方、取引先や一般顧客を乗せる運用に広げていくと、旅客運送と評価されるリスクが高まります。

さらに、内定者やインターン、研修参加者などスポットで利用する人をどう扱うかも、事前に考えておきたい論点です。

対象者を広げるほど「便利な制度」にはなりますが、その分だけコストとリスクも増していきます。採用強化なのか、既存従業員の定着支援なのかといった導入目的を明確にしたうえで優先度の高い層から順に対象を設定していくと、社内の納得感を得やすくなります。

通勤送迎バスに関わる法律

通勤送迎バスは「社員だけを無料で乗せているから安全」とは言い切れません。実際には、道路運送法・道路交通法・労働関連法・労災保険といった複数の法律が重なり合う領域に位置しており、運行方法によって求められる責任の範囲が変わってきます。

ここでは、とくに押さえておきたい4つの視点として、道路運送法の考え方、道路交通法上のルール、労働法との関係、労災保険での扱いを整理します。

道路運送法の位置づけ

通勤送迎バスに関してまず押さえておきたいのが、道路運送法は「誰でも自由に人を運んでよいわけではない」というルールを定めている点です。安全性と利用者保護を確保するために、運賃を受け取って人を運ぶ行為は原則として旅客自動車運送事業として国の許可を受けなければなりません。

多くの企業が検討する「駅と事業所のあいだを走らせる送迎バス」は、社員だけを無料で乗せるのであれば、自家用の白ナンバー車として扱う余地があります。一方で、社外の人を乗せたり、実質的に運賃を徴収していると評価される運用を行うと、緑ナンバーでの事業許可が必要になる可能性が出てきます。

福利厚生のつもりで始めた送迎が、結果として無許可営業とみなされないよう「誰を・どの条件で」乗せるのかを企画段階から整理しておくことが重要です。特に、採用難への対応として地域の求職者やグループ会社の従業員まで対象を広げたくなる場面では、白ナンバーのままでよいかどうかの境界が曖昧になりがちです。

企画を進める前に、自社の構想が自家用の範囲に収まるのか、それとも許可や登録が必要な事業に当たるのかを、法令の考え方に沿って確認しておく必要があります。

道路交通法の遵守事項

通勤送迎バスを安全に運行するうえでは、道路交通法の基本ルールを押さえておく必要があります。

前提として、大型・中型のバスを運転するには、普通免許とは別に対応する免許区分が求められます。人手不足を理由に、必要な免許を持たない社員にマイクロバスを運転させるような運用は、重大な違反につながりかねません。

また、乗車定員を超えて乗せないことや、座席に座る従業員のシートベルト着用を徹底することも不可欠です。特に通勤時間帯は渋滞や飛び出しが多く、急ブレーキや追突事故のリスクが高まります。

少しの油断が多数の従業員を巻き込む事故に発展するため、速度超過を避ける、無理な車線変更をしないなど、安全運転義務を意識した運転を社内ルールとして明文化しておくことが重要です。

さらに、高速道路を利用する場合の車間距離の取り方や、スクールゾーン・生活道路を通過する際の徐行義務も整理しておきましょう。

ドライバー任せにせず、「どの時間帯にどのルートを通るとリスクが高いのか」を担当部門が把握し、ダイヤやルート設定に反映させることで、企業の事故リスクを下げやすくなります。

労働関連法の扱い

通勤送迎バスを導入すると、従業員の「通勤のしかた」が事実上変わるため、労働基準法や就業規則との整合性を無視するわけにはいきません。

例えば、送迎バスの始発に合わせて早く家を出てもらっている場合、その乗車時間が労働時間に当たるのかどうかが論点になります。バスの利用が会社の明示的な指示に基づいており、実質的に業務の延長として扱われているのであれば、残業代の対象と考える余地も出てきます。

また、天候不良や交通渋滞でバスが遅延したとき、遅刻扱いとするのか、勤務時間の扱いを調整するのかも就業規則上の整理が必要です。マイカー通勤や公共交通機関利用と並べて、送迎バス利用をどのような位置付けにするのかを明文化しておくことで、後から「聞いていない」という不満が生じるリスクを抑えられます。

さらに、送迎バスの利用を事実上必須とするのか任意とするのかを明確にし、人事・総務・現場管理者が共通認識を持つことが、運用トラブルを避けるうえで重要です。

労災保険上の通勤災害の扱い

通勤送迎バスに関する議論で見落とされがちなのが、事故が起きた際に「通勤災害」として扱われるのか「業務災害」と評価されるのかという点です。

一般に、自宅と職場の往復中のけがは通勤災害とされますが、会社が費用を負担して運行する専用バスに乗っている場合、実態として業務の一部とみなされる余地があります。業務災害と評価されると、労災保険の給付内容や企業側の安全配慮義務の重さが変わり、民事上の賠償責任を問われる可能性も高まります。

特に、立ちっぱなしでの乗車を常態化させていたり、過密ダイヤで無理な運行を行っていた場合には、会社の運行体制そのものが問われるでしょう。こうしたリスクを踏まえると、任意保険や使用者賠償責任保険の付帯状況を見直し、想定される最悪のケースでも従業員・遺族に十分な補償が行われるよう準備しておくことが欠かせません。

同時に、事故発生時の社内報告フローや、労災申請手続きの担当部門をあらかじめ定めておくことも重要です。

ドライバー・現場管理者・人事部門がそれぞれどの段階で何を行うのかを明示しておくことで、万が一の際にも混乱を抑えつつ、従業員側への説明責任を果たしやすくなります。

通勤送迎バス運行の法令順守チェックポイント

通勤送迎バスの企画段階では、どうしても「ルート」「ダイヤ」「コスト」といった目に見える要素に意識が向きがちです。

しかし、導入後にトラブルを避けるためには、安全運転管理者の選任、運行記録の整備、事故時の対応体制、社内教育という四つの土台をあらかじめ整えておくことが欠かせません。

ここでは、「明日から運行を始めても大丈夫か」を確認するためのチェック項目として、最低限押さえておきたいポイントを解説します。

安全運転管理者の選任要件

通勤送迎バスを社用車として一定台数運用する場合、安全運転管理者の選任義務が発生するかどうかを確認すべきです。

自家用車であっても、事業所で使用する自動車が一定台数を超えると安全運転管理者を選任し、運転者台帳の作成や運転者への指導を実施することが求められます。

特に、マイクロバスやワゴン車など乗車定員が多い車両を導入すると、台数が少なくても基準に達するケースが少なくありません。

また、本社・工場・営業所など複数拠点で車両を使っている企業では、グループの台数を合算すると基準を超えているのに、各拠点では「うちは数台だから大丈夫」と誤解している場面も見受けられます。

安全運転管理者の選任は形式的な手続きではなく、通勤時間帯の事故リスクを組織で管理する土台になるため、送迎バス導入前に整理しておきたいポイントです。誰を安全運転管理者に任命するのかについても、単に空いている管理職に割り当てるのではなく、現場の運行実態を把握している人材を選ぶことが望ましいでしょう。

選任後は、事故発生状況やヒヤリハットを継続的に共有し送迎ルートやダイヤの見直しにつなげることで、制度が形骸化せずに機能し続けます。

安全運転管理者については、別記事「安全運転管理者とは?運行管理者との違いや資格要件・業務内容を解説」で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

運行管理記録の整備

通勤送迎バスの安全性を維持するには「どのように運行していたか」を後から確認できる記録類が欠かせません。

タコグラフやデジタル運行記録計を導入していない場合でも、運行日報や点呼記録、車両点検表などの基本的な記録は残しておくべきです。

例えば、早朝や深夜の便で居眠り運転のリスクが高まる時間帯を把握するには、出庫・帰庫時刻や走行距離、ドライバーの体調申告を継続的に蓄積しておく必要があります。万が一事故が発生した際、どのようなダイヤで運行していたのか、直前の健康状態や休憩時間は適切だったのかを説明できるかどうかで、企業への評価は大きく変わります。

旅客自動車運送事業ほど厳格な帳票が求められないケースでも、自社なりのチェックリストを整備し、少なくとも「誰が・いつ・どの車両を運転したのか」が追える状態にしておくことが重要です。あわせて、法定点検やオイル交換、タイヤ交換などの整備履歴も運行記録と一元管理しておくと、点検漏れに早く気付きやすくなります。

事故発生時の対応体制

通勤送迎バスの事故そのものを防ぐことが最優先ですが、現実には「ゼロ」にすることはできません。

そのため、万が一の際に混乱を最小限に抑えるための対応体制を事前に整えておくことが重要です。具体的には、負傷者の救護・緊急通報・二次被害の防止など事故発生時にドライバーが最優先で行うべき行動と、現場責任者や本社の担当部署が引き継ぐ連絡フローを明文化しておきます。

委託運行を行っている場合でも「事業者任せ」にするのではなく、企業側がどのタイミングで情報提供を受け、従業員や家族、取引先にどう説明するのかを取り決めておく必要があります。

特に、SNSや社内チャットを通じて情報が広がると情報が錯綜しやすいため、社内外への発信窓口を一本化しておくことが評判リスクの抑制につながります。

さらに、重大事故を想定し、広報・総務・人事などで構成する緊急対策チームの立ち上げ条件や役割分担をあらかじめ決めておけば、誰が現場対応を担い、誰が会社としてコメントを出すのかが明確になり、初動の迷いを減らせるでしょう。

社内教育体制

通勤送迎バスを安全に運行し続けるには、ドライバーだけでなく総務・人事・現場管理者を含めた社内教育が欠かせません。

ドライバー向けには、道路交通法や社内ルールの再確認だけでなく、眠気・渋滞・歩行者の動きなど通勤時間帯ならではのリスクを想定したケーススタディ形式の教育が有効です。

一方、現場管理者には「バスの遅延で始業が遅れた場合の対応」や「乗車中のトラブルが報告された際のエスカレーションの仕方」など、判断に迷いやすい場面を事前に整理しておく必要があるでしょう。

また、従業員側にも、乗車マナーや車内でのハラスメント防止、クレームがある場合の適切な申し出先を周知しておくことで、感情的な不満がSNSに書き込まれる前に相談してもらいやすくなります。

年に一度の形式的な研修だけで終わらせず、朝礼でのミニ教育やヒヤリハット共有の場を設けることで、日常的に安全意識を高めらます。

実際の送迎ルートで起きた事例を題材に「次に同じことが起きたらどう対応するか」を現場で話し合う習慣をつくれば、机上の知識にとどまらない、実務に根ざした安全文化が育ちやすくなるでしょう。

通勤送迎バスの運行前に法律を確認しておこう

通勤送迎バスは、採用力の向上や定着率の改善に役立つ施策である一方、道路運送法・道路交通法・労働関連法・労災保険のそれぞれに目配りしなければならない取り組みでもあります。

どのナンバー区分で運行するのか、誰を対象にどのルートで走らせるのか、安全運転管理者や運行記録の整備をどう進めるのかによって、企業が負う責任の範囲は大きく変わります。

まずは本記事で触れた論点をチェックリスト代わりに、自社の構想を一度紙に書き出して整理してみてください。そのうえで、バス事業者や社労士、保険代理店などと相談しながら、自社のリスク許容度や運営体制に合った運行方法を検討していくとよいでしょう。

準備段階で手間をかけておけば、導入後に思わぬトラブルに追われることなく、従業員にとって安心できる通勤環境づくりに専念できるはずです。

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