2023.08.31
カテゴリ：運行管理
タグ：ノウハウ
スクールバスが外国で普及する理由は？背景とメリット・安全対策の例を紹介
海外では、スクールバスが広く普及している国も多くあります。なぜ海外でスクールバスが導入されているのか、日本とどのような違いがあるのか気になっている方もいるでしょう。
そこでこの記事では、外国でスクールバスが普及している背景に加え、スクールバスを導入するメリットや実施されている安全対策の例を紹介します。
外国のスクールバス事情を詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。
外国でスクールバスが普及している背景
海外では、子供たちの通学手段としてスクールバスが広く導入されている国もあります。スクールバスが普及する背景は国や地域によって異なりますが、導入の目的は主に遠距離通学を行う児童や生徒への支援です。特に公共交通機関が不十分な地方や農村地帯では、スクールバスが通学に役立ちます。
子供の安全な通学環境を確保するために、スクールバスを導入している地域もあります。海外では、通学中に子供が犯罪に巻き込まれる可能性がある地域も珍しくありません。スクールバスが導入されていれば、子供たちはそうした危険な地域を避けられるでしょう。特に治安が悪い地域の通学では、スクールバスは欠かせない存在です。
このように、海外ではさまざまな事情からスクールバスが欠かせない地域もあります。
スクールバスを導入するメリット
スクールバスの導入には、次のようなメリットがあります。
- 安全性の向上
- 保護者の負担の軽減
- 社会性の向上
- 教育効果への期待
- 交通渋滞の緩和
- 環境負荷の低減
それぞれ、詳しく解説します。
安全性の向上
スクールバスのドライバーは、一般的に専門的な研修を受けた人が担当します。そのため、事故の発生率が低い傾向があります。例えばドイツでは、スクールバスにおける事故発生率は通学全体の発生率の14分の1程度です。ドイツ国内では、スクールバスはもっとも安全な交通手段だと認識されています。
国によっては、スクールバスに明るい色を使い、他の車から見つけやすくして注意を促すケースもあります。これも、スクールバスの事故発生率が低いひとつの要因といえるでしょう。
また、スクールバスの強度や安全基準を法律で定めているケースや、監視カメラや無線機、応急手当用の救急箱などを搭載した車両もあります。これらによって、万が一事故が発生した場合でも、重大な事態を避けられる可能性が高まります。
参考：諸外国におけるスクールバスの活用状況（平成20年3月文部科学省）
保護者の負担の軽減
スクールバスの導入は、保護者の経済的・時間的な負担の軽減にも役立ちます。
自家用車での送迎には、ガソリン代や駐車料金などの費用が発生します。1回1回の費用はそれほど負担に感じなかったとしても、毎日送迎するとなると大きなものです。スクールバスは、1台で多くの子供たちを一度に送迎できるため、1家庭当たりの負担を軽減可能です。
また、学校の開始と終了に合わせた送迎は、時間的な負担もかかります。特に、保護者が仕事をしている場合には、より慌ただしく負担が大きいと感じられるでしょう。スクールバスは決まった時間に自宅近くで乗降するため、送迎にかかる時間を減らせます。
社会性の向上
スクールバス内では、普段クラスで接する機会の少ない他の生徒とも交流が生まれます。これは、子供たちが多様な価値観や考え方に触れ、理解や対応能力を高める良い機会です。また、運転手や他の保護者とのコミュニケーションが必要となる場面もあるでしょう。そうした機会は、子供たちのコミュニケーションスキルを育みます。
さらに、スクールバスが共有空間であることも、社会性を育む要因のひとつです。小さなトラブルの解決や座席の譲り合いなどから、子供たちはチームワークと協調性を学びます。
このように、スクールバスを利用する中で自然にコミュニケーションや協調性を学べるのも、メリットだといえるでしょう。
教育的効果への期待
スクールバスは、自己管理能力の向上に寄与する点も注目されています。
スクールバスは、定時に出発・到着するため、子供たちは時間を守る重要性を自然と学びます。また、スクールバスには乗車時の決まりが多くあるため、ルールの重要性も学べるでしょう。
さらに、公共の場で過ごし、自分の荷物や降りる場所を自分で管理するといった行動から、責任感や自立心の養成も期待されています。
交通渋滞の緩和
多くの保護者が自家用車で学校の送迎をする場合、学校周辺の道路は非常に混雑します。交通量の多い道路は、事故の危険性が高まります。また、近隣住民からクレームが寄せられてしまうケースもあるでしょう。スクールバスの導入によって、学校に自家用車で送迎する保護者が減ると、学校周辺の渋滞が緩和されます。
自家用車で個別に送迎する場合には、多くの車でそれぞれ乗降が発生するのに対して、スクールバスの場合には多くの人数がまとめて乗降することも、交通渋滞が緩和される要因のひとつです。
環境負荷の低減
スクールバスを導入する社会的なメリットとして、環境負荷の低減も挙げられます。
各家庭がそれぞれ自家用車で送迎する場合、送迎に使われる車の台数が多いため、その分二酸化炭素の排出量も増えます。しかしスクールバスは1台で多くの生徒を運べるため、二酸化炭素の排出量を大幅に減らせるのです。
また、送迎に使われる燃料の量がトータルで減少することも、環境負荷の低減に役立ちます。スクールバスがエネルギー効率の良いエンジンや先進的な燃料技術を採用していれば、環境負荷はさらに小さくなります。
スクールバスの導入がもたらす多くのメリットの中で、環境への影響も非常に重要な要素です。特に、スクールバスは一台で多くの子供を運ぶことができるため、CO2排出量を大幅に削減する可能性があります。
外国で実施されているスクールバスの安全対策例
スクールバスが普及している国では、子供たちをより安全に送迎するため、さまざまな安全対策も実施されています。ここでは、外国のスクールバスで導入されている安全対策の具体例を紹介します。
- 事故時に衝撃を減らせる車両の利用
- 運転手の採用基準の厳格化
- 置き去り防止装置の導入
- 窓ガラスの透明度検査の実施
事故時に衝撃を減らせる車両の利用
アメリカでは、子供たちの安全を最優先に考え、耐久性に優れた素材と構造を採用しています。横転や衝突が起きた場合に車内を守る「ロールケージ」と呼ばれる構造が採用されていることに加え、多数の非常口もあるため万が一事故が発生した場合にもすぐに車外へ脱出可能です。
スクールバスを利用している歴史が長い国だけあって、何度も改良を重ねた結果、現在の衝撃が少ない車体の開発に繋がっているようです。
運転手の採用基準を厳格化
スクールバスの安全性は、運転手によっても大きく左右されます。
アメリカでは、スクールバスの運転手として採用されるために厳格な採用審査を通過しなければなりません。州によって方針は異なりますが、一般の車両を運転する免許以外に、スクールバスドライバーとしての免許が必要な州もあります。
免許を取得するためには、学科や実技の試験を通過するだけでなく、運転に支障がある持病を持っていないか病院で検査を受けなければなりません。また、酒気帯び運転や家庭内暴力、懲役以上の前科などがあると多くの場合却下されます。
免許取得前に各種の講習を受けるほか、免許取得後も定期的な講習の受講が必要です。このように厳格な免許の取り扱いを行うことで、スクールバスの安全を守っています。
スクールバスの安全性は、運転手の資質に大きく依存します。特にアメリカでは、子供たちの安全を最優先に考え、運転手の採用には厳格な基準が設けられています。
置き去り防止装置の導入
多くの国で、スクールバスには置き去り防止装置が導入されています。置き去り防止装置とは、停車後も車内に子供が残っている場合、警告を発する装置のことです。置き去り防止装置の設置が義務化されている国もあります。
日本でも、幼稚園や保育所などのバスにおいては、置き去り防止装置の設置が義務化されています。日本での置き去り防止装置義務化については、別記事「置き去り防止安全装置義務化！補助金と選び方のポイントを詳しく解説」で詳しく解説しています。
置き去りを防止するために気をつけているつもりであっても、人間だけではミスや確認不足を起こすことがあります。置き去り防止装置の導入によって、子供が車内に取り残される事故を防げる可能性が高まるのです。
窓ガラスの透明度検査の実施
韓国では、窓ガラスの透明度にも基準が設けられています。窓ガラスの透明度が高ければ、万が一子供が車内に置き去りにされていた場合でも、外部から発見できる可能性が高まるためです。
置き去り防止装置の導入義務化や、外部に助けを求めるためのボタン設置も行われており、何重にも安全対策が施されています。
スクールバスの導入にはメリットが多い
この記事では、外国でスクールバスが普及する理由や安全対策を紹介しました。
外国では、遠方から通学する生徒の支援や治安面への懸念からスクールバスを導入している国が多くあります。スクールバスを導入することで通学時の安全性が向上するだけでなく、保護者の負担軽減や生徒の社会性向上、渋滞の緩和と言ったメリットも得られます。
国によってさまざまな安全対策が行われており、日本の送迎バスで参考にできる部分も多いでしょう。自社で送迎バスを運用している場合には、ぜひ安全対策の見直しも実施してみてください。
