2024.01.08
カテゴリ:運行管理
タグ:ノウハウ
ライドシェアとは?解禁に向けた議論とメリット・デメリットを徹底解説タクシー業界の人手不足対策として、注目されているのがライドシェアです。個人間で相乗りを行うサービスや活動のことを指す言葉で、現在日本では規制によって運用できないものの、今後規制緩和で認可される可能性があります。
そこでこの記事では、ライドシェアとは何か、解禁に向けた議論の内容も含めて詳しく解説。さらに、ライドシェアのメリット・デメリットも解説します。
今後のライドシェアの動向に興味がある方はぜひご覧ください。
ライドシェアとは
ライドシェア(ride-sharing)とは、個人間で自動車の相乗りを行うサービスや活動のことです。ライドシェアでは、ドライバーが自分の車を利用して、乗客を目的地まで有料で運びます。特にスマートフォンアプリを介して利用者同士を結びつける形で提供されることが多く、乗客はアプリを通じてドライバーを探し、目的地までの移動を手配可能です。
ライドシェアは近年のデジタル技術の進展と共に、都市部を中心に世界中で普及しています。しかし、法的規制、安全性、労働条件といった課題も存在し、これらはライドシェアサービスの展開と成長において重要な考慮事項です。
ライドシェアの市場規模
ライドシェアは、世界各地ですでに運用が開始されています。EMARGEN RESERCHによると、2022年の世界におけるライドシェアの市場規模は988億ドルであったとされています。また、2023年から2032年の年間平均成長率は15.9%と予測されており、今後も成長が期待できる市場だといえるでしょう。
日本におけるライドシェア規制
世界では巨大な市場規模となっているライドシェアですが、日本ではまだ運用に至っていません。大きな理由のひとつが、道路運送法でライドシェアが禁止されていることです。道路交通法の第七十八条では、事業用自動車以外の自家用自動車での有償運送は禁止されています。日本でライドシェアを運行すると、現状では「白タク行為」になってしまうのです。
そのため、日本でライドシェアの運行を実施するためには、まず法改正を行わなければなりません。国全体を巻き込んだ議論が必要となることから、日本ではまだライドシェアの運行開始に至っていないのです。
日本におけるライドシェア解禁に向けた議論
前述の通り日本では現在、ライドシェアは法律により運行が規制されています。しかし最近、この制限を緩和する動きが見られます。日本におけるライドシェア解禁に向けた議論について、次の5つの観点から解説します。
- ライドシェア解禁が議論される理由
- ライドシェア解禁によるタクシー・バス産業への影響
- 新たな交通手段としての潜在能力への期待
- 2024年4月に条件付きで解禁
- >特区制度と実証実験
ライドシェア解禁が議論される理由
ライドシェア解禁が議論される主な理由は、社会問題への対応とタクシー業界の深刻な人手不足です。政府や関係者は、ライドシェアを通じて地域交通の問題を解決し、タクシー業界の労働力不足に対応する方法としてライドシェアの活用を検討しています。
しかし、ライドシェアの解禁にはタクシー業界からの反対も少なくありません。タクシー事業者は、ライドシェアが運転者の労働条件や輸送の安全性を確保するための既存の法律や規制を回避するものだと批判しています。ライドシェアは旅客運送の資格を持たない一般人によって行われるため、運転者や車両に関する安全管理の補償が不十分だという懸念があるためです。
ライドシェア解禁によるタクシー・バス産業への影響
ライドシェアの解禁によるタクシー・バス産業への影響を懸念する声もあります。ライドシェアが解禁されれば、タクシー・バス業界は競争相手が増えることとなります。タクシーやバスの代わりにライドシェアが利用されるケースも増えるでしょう。
そのためタクシー・バス業界は、ライドシェアの導入が公共交通の安定供給に影響を及ぼし、既存の公共交通事業者の経済的基盤を損なう可能性があると主張しています。また、高齢者を中心としたスマートフォンを利用していない人にとっては、公共交通の廃止や減少によって移動に不便が生じる可能性もあります。
新たな交通手段としての潜在能力への期待
一方でライドシェアを支持する人たちが期待しているのが、新たな交通手段としての潜在能力です。特に交通インフラが未発達な地域や人口減少による公共交通の維持が困難な地域での移動手段として有効であると主張しています。大人数を運ぶ公共交通機関の維持は難しくても、少人数を運ぶライドシェアのサービスであれば維持できる可能性があるためです。
さらに、自分の自由な時間に働けるライドシェアは、地方に新しい雇用機会を提供し、地域コミュニティの結束を強化するとも考えられています。
2024年4月に条件付きで解禁
2024年4月には、ライドシェアが条件付きで利用できるようになります。タクシーの不足が深刻な地域や時間帯に限定した運用で、朝の通勤時間帯やイベント開催時、公共交通機関のトラブル時などの運用が想定されています。
通常日本では、第二種免許がなければ料金を受け取って人を輸送することはできません。しかし、新たな制度では、タクシー会社の運行管理のもとで、第一種の運転免許しか持っていないドライバーでも乗客の輸送が可能です。タクシー会社がドライバーへの教育や車両整備の管理を実施するとともに、事故発生時の責任も負うかたちで制度が運用されます。
さらに、この条件付き解禁で効果や問題点を検証したうえで、2024年6月までに法改正の結論を出すとも発表されています。つまり、この条件付き解禁での運用状況次第では、条件を撤廃したライドシェアの運行が開始される可能性もあるのです。
特区制度と実証実験
実験的に、ライドシェアの運用を開始している地域もあります。例えば兵庫県養父市では、自家用車で市民や観光客を有料で輸送する試み「やぶくる」が実施されています。
やぶくるで運転を担当するのは、タクシー会社に登録したドライバーです。登録ドライバーは地域住民であるため、まさにライドシェアと同様の試みであるといえるでしょう。やぶくるは「国家戦略特区」の制度を利用して運用されています。
また、実証実験としてライドシェアを運行している街もあります。北海道の中頓別町で実施されているのは「なかとんべつライドシェア」です。中頓別町内からであれば、Uberアプリを利用して配車を依頼できます。
通常のライドシェアと異なるのは、ドライバーが受け取るのがガソリン代などの実費のみである点です。そのため、有償での旅客輸送とはならずに二種免許がない人でもドライバーとして稼働できます。
このように、日本各地のさまざまな場所ですでにライドシェアの運行は開始されています。本格的な運用開始時には、こうした特区や実証実験での利用状況なども参考にされる可能性があるといえるでしょう。
ライドシェアのメリット
ライドシェアには、次のようなメリットがあります。それぞれ、詳しく解説します。
- 安価で利用できる
- 移動の利便性が向上する
- 手軽に副収入を得られるようになる
安価で利用できる
ライドシェアの魅力の1つは、コスト効率の良さです。ライドシェアは、一般的なタクシーサービスに比べてはるかに低料金で利用できます。
手頃な価格設定は移動手段としてライドシェアを選ぶ乗客にとって大きなメリットであり、頻繁に移動が必要な人々の経済的な負担を大幅に軽減します。
特に、多くの都市住民にとって魅力的な選択肢となるでしょう。
移動の利便性が向上する
ライドシェアの導入によって、タクシーがつかまりにくい地域や時間帯における移動の利便性が大幅に向上します。
観光地や都市部ではライドシェアがタクシーの不足を補い、訪日外国人観光客を含む多くの旅行者にとっての便利な選択肢となるでしょう。スマートフォンアプリを通じて手軽に移動手段を確保できるため、外国人旅行客の満足度向上や旅行体験の充実にも寄与することが期待されます。現金を使わずキャッシュレスで決済できるのも、特に外国人観光客にとって便利に感じられるでしょう。
さらにライドシェアは、都市部においてもピーク時間帯のタクシー不足の問題を緩和し、日常的な移動をより柔軟かつ効率的にします。これにより、通勤や日々の用事での移動がよりスムーズになり、時間の節約にも繋がる可能性があるのです。
手軽に副収入を得られるようになる
ライドシェアが普及すると、多くの人が手軽に副収入を得られるようになります。
ドライバーは、自分の空いている時間を利用して、自家用車を活用し、効率的に副収入を得られます。例えば、仕事が早めに終わった日や週末など、自分の都合の良い時間にサービスの提供が可能です。
ライドシェアは特定のスキルや特別なトレーニングを必要とせず、運転免許を持っていれば誰でもドライバーになれるため、さまざまな背景を持つ人々がアクセスしやすい副業です。海外では、副業としてのライドシェアが幅広い人々に受け入れられており、新しい副収入の源としての地位を確立しています。
ライドシェアの問題点
ライドシェアにはメリットだけでなく次のような問題点もあります。それぞれ、詳しく解説します。
- 安全性の懸念
- ドライバーの労働待遇
- ドライバーの技術や知識不足
- 事故時の保険適用・補償
安全性の懸念
海外ではライドシェアサービスの急速な普及に伴い、安全性に関する懸念が高まっています。特に、ドライバーの資質と行動は大きな問題です。
世界各地で報告されているライドシェアのドライバーによる強盗や殺人、暴行などの犯罪は、利用者にとって深刻な安全上のリスクを示しています。こうした事件はドライバーの背景チェックや選定プロセスの不備に起因していることが多く、サービス提供者による厳格な安全対策の必要性を浮き彫りにしています。
また、ライドシェアのドライバーによる飲酒運転も、公共の安全に対する重大な脅威です。乗客だけでなく他の道路利用者にも危険をもたらし、重大な交通事故に繋がる可能性があります。ライドシェアサービスの性質上、ドライバーに対する労働時間の規制がほとんどないため、長時間の運転による疲労や居眠り運転などのリスクも懸念されています。
ドライバーの労働待遇
ライドシェア業界において、ドライバーの労働待遇は重要な問題として浮上しています。ライドシェアのドライバーは多くの場合独立した個人事業主として扱われ、従来の雇用関係にある労働者とは異なる条件で働いています。ドライバーが個人事業主として働く状況は、多くの国で労働時間・給与・福利厚生などの待遇に関する訴訟が起こる原因です。
ライドシェア会社は通常、ドライバーに対して最低賃金や休暇、医療保険といった雇用者としての責任を負いません。そのため、ドライバーは不安定な収入や保護の不足に直面しています。また、ライドシェアのドライバーは自分の車を使用するため、車両の維持費や保険、燃料費などのコストを自己負担しなければならない点も問題です。
こうした問題に対応するため、多くの国や地域ではドライバーの権利を保護するための法律や規制の導入が検討されています。一部の地域では、ライドシェアドライバーを従来の雇用関係にある労働者として扱う動きもあり、ドライバーに最低賃金や社会保険への加入などの権利を認める判決が下されています。
ドライバーの技術や知識不足
ライドシェアサービスにおいて、ドライバーの技術や交通規則に関する知識の不足は、利用者にとっての重要な懸念事項です。専業のタクシードライバーと比較すると、ライドシェアのドライバーはしばしば運転経験や専門的な訓練が不足していることがあります。そのため、運行の安全性や効率的なルート選択の面で問題が発生することもあるでしょう。
専門的な訓練を受けていないライドシェアドライバーは緊急時の対応においても不慣れな場合があります。また、ライドシェアドライバーは副業として仕事をしていることが多いため、プロのタクシードライバーのように日々の運転に専念していない場合がほとんどです。そのため、道路に関する最新の情報や変更に対する対応が遅れることがあり、安全上のリスクを高めます。
事故時の保険適用・補償
ライドシェアにおいては、事故時の保険適用と補償が大きな問題となる可能性があります。
通常ライドシェアドライバーは自分の車を使用するため、事故が発生した際には個人の自動車保険が適用されます。しかし多くの自動車保険では、商業目的の車の使用をカバーしていません。
ライドシェア会社が独自の補償プランを提供しているケースもありますが、全ての状況に対応できるわけではありません。例えばドライバーが乗客を乗せていないときやアプリがオフになっているときの事故はカバーされない可能性があります。
また、事故が発生した場合の補償額に関しても、ライドシェア会社によって大きな差があります。事故の責任をめぐる論争が生じた場合、法的な紛争に発展するリスクもあるのです。
ライドシェアのメリットと問題点を知っておこう
個人間で相乗りを行うライドシェアは、タクシー業界の深刻な人手不足をきっかけに注目されるようになりました。現在日本では運用できませんが、2024年4月には限定的に解禁される予定もあり、近い将来規制が緩和される可能性があります。
ライドシェアは、安価で利用でき利便性が向上するというメリットがある一方で、安全性や労働待遇に懸念も残ります。今後、ライドシェアが認可されるのか、注目して見守りましょう。
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