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自動車運行管理ラボ

2025.12.26

カテゴリ:運行管理

タグ:

クリニックの送迎サービスはなぜ必要?運用方式と導入手順も紹介

クリニックの送迎サービスは、患者さんの通院を途切れさせにくくし、予約枠の稼働を安定させる施策です。移動が負担になると「行きたいのに通えない」状態が起き、受診間隔の延伸や検査の先延ばし、薬切れにつながりやすくなります。とくにリハビリや透析など通院頻度が高い診療では、1回の欠席が次の欠席を呼ぶ流れも見逃せません。

一方で、送迎は運転だけで完結しません。家族の付き添い負担、当日キャンセルの連鎖、地域連携のしづらさなど、医療の外側で起きている課題が重なり、院内オペレーションにも影響が波及します。導入判断を誤ると、受付の電話対応や時間調整が増え、現場が疲弊することも考えられるでしょう。

この記事では、送迎が必要とされる背景を整理したうえで、運用方式の違いと導入手順を解説します。クリニックに送迎サービスを導入したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

クリニック送迎サービスが必要とされる背景

クリニックの送迎サービスが必要とされる背景には、次のようなものがあります。それぞれ、詳しく解説します。

  • 通院継続の課題
  • 家族負担の増加
  • 予約キャンセルの発生
  • 地域連携の重要性

通院継続の課題

送迎が必要になるのは、患者さんが「行きたいのに通えない」状態を放置すると、治療の継続率が落ちるためです。

移動が負担になると受診間隔が伸び、検査の先延ばしや薬切れが起きます。リハビリや透析のように通院頻度が高い診療では、1回の欠席が次の欠席を呼びやすい点も見逃せません。

坂道の多い地域、雨雪の日、バスの乗り継ぎが必要なルートなど、医療以外の障壁が積み上がると通院は途切れます。

結果として予約枠が空き、待合の混雑にも波が出ます。移動の障壁を減らす施策として送迎を位置づけると、院内の合意を形成しやすいでしょう。

家族負担の増加

送迎を検討する場面では、患者さん本人より家族の負担が先に限界に近づくことがあります。通院の付き添いは「移動+待ち時間+会計」で半日仕事になり、仕事の調整やきょうだいの世話と衝突しやすいためです。

さらに、送迎を担う家族が固定化すると、急な残業や体調不良で代替が立たず、直前キャンセルが増えます。介護サービスを使っていても通院は対象外になりやすく、家族に戻ってくるケースも少なくありません。

たとえば「今日は無理なので来週にします」といった状況が続くと、治療だけでなく家族関係の摩耗も進みます。送迎を導入することで、通院継続と家族の生活の両方を守れるでしょう。

予約キャンセルの発生

送迎がないクリニックで起きやすいのが、「来院できない理由」が直前に判明して予約をキャンセルされてしまう問題です。

患者さんが移動手段を確保できないと、診療の意思とは別に当日のキャンセルが発生しがちです。

キャンセルが午前の早い枠や雨の日に偏ると、受付・検査・診察の稼働が凸凹になり、現場は待ち時間対応に追われます。さらに、空いた枠を埋めようとして電話連絡が増えると、スタッフの手が止まります。

加えて、再予約の調整が続くと次週以降の枠も崩れてしまうでしょう。送迎を設ける場合は「キャンセルをゼロにする」より「キャンセル理由の不確実性を減らす」と捉えると、投資判断が現実的になります。

地域連携の重要性

送迎は単なる利便性ではなく、地域連携を機能させるための「通院の導線」としても有効です。

紹介元の病院やケアマネジャーが患者さんをつなぐとき、通える現実が担保されないと紹介が進みにくいでしょう。また、退院後のフォロー、在宅からの検査、リハビリ継続などは、移動手段が確保できるかで利用可否が変わります。

送迎の有無が明確だと、連携先は説明しやすく、患者さんも不安を減らせます。結果として「遠いので難しい」と断られるケースを減らせるでしょう。

院内だけで完結する施策ではなく、地域の選択肢を増やす仕組みとして設計すると効果が見えやすくなります。

クリニック送迎サービスの運用方式

クリニックの送迎サービスでは、次のような運用方式が考えられます。それぞれ、詳しく解説します。

  • 自院運行方式
  • 委託運行方式(送迎代行)
  • タクシー連携方式
  • 予約制乗り合い方式

自院運行方式

自院運行方式は、車両と運転手をクリニック側で用意して運行する形です。時間帯やルートを細かく調整でき、患者さんの特性に合わせた対応も取り入れやすい点がメリットです。

一方で、採用・労務管理、点検・保険、欠勤時の代替、事故発生時の初動など、運行以外の業務が必ず発生します。たとえば朝の外来前に「迎えが来ない」と電話が入ると、受付が対応しつつ調整が必要になります。さらに、運転手が固定化すると属人化も進みがちです。

自院運行を選ぶのであれば、運行ルールと連絡フローを文書化し、担当が替わっても回る状態を最初に作ることが重要です。

委託運行方式(送迎代行)

委託運行方式(送迎代行)は、運転手の手配や日々の運行を外部に任せる形です。自院の負担を抑えつつ、欠勤時の代替や運転手教育を委託先の枠組みで回せる点が強みです。

反面、当日の遅延連絡やクレーム対応を誰が受けるかが曖昧だと、現場が混乱します。たとえば遅延が発生した際、患者さんはクリニックへ電話し、委託先は状況が共有されていない、といったズレが起きます。

契約前に「連絡窓口」「報告の頻度」「事故時の責任範囲」を決めておくと、運用が安定しやすいでしょう。

タクシー連携方式

タクシー連携方式は、タクシー会社と契約し、必要なときだけ配車して送迎を行う方法です。車両や運転手の固定費を抱えずに始めやすく、利用者数が読めない立ち上げ期にも適しています。

いっぽう、混雑時間帯は配車できない、待ち時間が読めないなど、診療スケジュールとズレる場面も出てくるでしょう。支払い方法も院払い・患者払い・チケット運用で手間が変わります。

たとえば患者さんが自己手配すると、来院遅れが「自己責任」扱いになり、院内の納得感を損ねることがあります。

対象者と運用ルールを絞り、例外対応の窓口を決めておくとよいでしょう。

予約制乗合方式

予約制乗合方式は、複数の患者さんをまとめて乗せ、決めたルートで送迎する形です。

1人あたりの移動コストを抑えやすく、定期通院が多いクリニックでは運用しやすいでしょう。一方で、遅刻や乗車準備の遅れが連鎖すると、全員の到着時刻が崩れます。

たとえば車いす対応や介助が必要な方が混在すると、乗降時間が読みにくくなります。そこで「到着の時間帯を幅で伝える」「待機の上限を決める」「乗車前確認の連絡を入れる」など、遅延を前提にした設計が必要です。

乗合は効率化の手段ですが、患者体験を守るルールがあって初めて機能します。

クリニック送迎サービスの導入手順

クリニック送迎サービスは、次の手順で導入を進めるとよいでしょう。それぞれ、詳しく解説します。

  • 送迎の条件を整理する
  • 院内で担当とルールを決める
  • 費用の目安を出す
  • 委託先の業者を決める
  • 定期的に運用を見直す

送迎の条件を整理する

導入準備で最初に行うべきは、送迎の条件を言葉にして明確化することです。

ここが曖昧だと、見積もりが比較できず、現場のルールも不安定になってしまいます。具体的には目的、対象、範囲、提供レベルを決めます。加えて、乗合か個別か、車いす対応の要否、同伴者の扱いも整理しておきましょう。

たとえば「午前だけ」「半径3km」「予約は前日まで」など、数字と期限を入れると判断が速くなります。条件が揃うと、必要な車両・人員・費用が見える化され、次の工程が進みやすくなります。

院内で担当とルールを決める

送迎サービスを運用するには、院内側の担当とルールを先に決めておく必要があります。

送迎は「運転」だけで終わらず、予約受付、時間変更の連絡、当日遅延時の調整が必ず発生するためです。

たとえば診察が押して迎えの時間がずれると、受付・看護師・会計のどこが連絡するかで混乱します。連絡手段も電話・SMS・アプリで負担が変わります。予約枠と送迎枠を別管理にすると二重入力が起きやすく、ミスの温床になるでしょう。

加えて、住所や緊急連絡先など患者情報の共有範囲を決め、同意の取り方も決めておく必要があります。

担当者が不在でも運用できるよう、例外対応の基準まで文書化しておくと安心です。

費用の目安を出す

送迎の際に発生する費用は「車を動かすコスト」だけではありません。

運行費のほかに、院内の調整時間や連絡対応にもコストが発生します。自院運行なら車両購入・保険・点検・駐車場・運転手人件費などがかかるでしょう。委託やタクシー連携では、基本料金に加えて待機時間、走行距離、時間帯加算などが必要です。

週あたりの運行回数、1回あたりの平均走行距離、待機の発生頻度の見込みを立て、固定費と変動費を分けて試算してみましょう。

あわせて「月いくらまでなら継続できるか」を線引きし、院内で共有しておくことも重要です。

委託先の業者を決める

委託先を決める際は、価格だけで比較すると運用が破綻しやすくなります。

送迎は「現場の例外」が多く、対応の質が体験と安全に影響します。代替運転手の手配体制、教育内容、車両の清掃・点検の基準、遅延時の連絡手順、事故時の初動と報告範囲は事前に確認しておきましょう。

加えて、患者情報を扱うため、名簿の受け渡し方法や保管ルールも外せません。可能なら現場の同乗や試行期間を設け、想定外が起きたときの反応を見ます。

見積依頼は条件を揃えて出すことで、比較しやすくなります。回答の速さや質問の質も評価材料です。

定期的に運用を見直す

送迎は導入して終わりではなく、定期的な見直しで効果が出やすくなります。

患者さんの属性や予約の波で、最適なルートと時間帯が変わるためです。見直しでは、利用率、遅延回数、当日キャンセル数、電話対応件数などを記録しておきましょう。数字が揃うと「何が負担か」が説明でき、改善が進みます。

たとえば遅延が多いなら到着時間を幅で案内し、待機上限を設定する方法が考えられます。雨雪や感染症の流行など季節要因で需要が増える時期は、臨時便や対象の絞り込みも検討します。

クレームが出た場合も、原因を運転手個人に寄せず、ルールと連絡の設計を直すと再発を抑えやすいでしょう。

クリニックの送迎サービス導入を検討しよう

クリニックの送迎サービスは「通院の障壁を減らす」だけでなく、予約稼働の安定や地域連携にも影響します。

まずは 送迎の条件を明確にし、院内の担当や連絡ルールについても考えてみましょう。

その上で、自院運行・送迎代行・タクシー連携・予約制乗合のうち、現場負担と費用のバランスが合う方式で 同一条件のまま複数社に見積を依頼すると比較が進みます。

この記事を参考に、クリニックの送迎サービス導入を検討してみてください。

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