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自動車運行管理ラボ

2026.09.16

カテゴリ:運行管理

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従業員のマイカー通勤で起きる事故のリスク|会社の責任と対策も解説

最寄り駅から離れた工場や物流拠点では、従業員のマイカー通勤を認めなければ人が集まりません。毎朝、何十台もの自家用車が同じ時間帯に事業所へ向かい、夕方には同じ道を戻ります。運転はすべて、会社の目が届かない場所で行われています。

従業員が通勤中に人身事故を起こしたとき、会社にどこまで請求が来るのかが分からないまま、マイカー通勤を黙認している事業所も少なくありません。労災保険の対象になるのか、被害者への賠償を会社が負うのか。判断がつかないまま、毎日の通勤が続いています。

この記事では、マイカー通勤で事故が起きやすくなる条件、会社が問われる法的な責任と労災保険での通勤災害の扱い、社内の備えをまとめました。自社でどこまで手を打てているかを確かめながら読み進めてみてください。

従業員のマイカー通勤で事故が起きやすくなる条件

マイカー通勤中の事故は、従業員個人の運転の癖だけで起きるわけではありません。事業所の立地と勤務の形によって、従業員が運転する距離と時間帯が変わります。ここでは、マイカー通勤で事故が起きやすくなる条件について説明します。

駅から遠い事業所ではマイカー通勤に頼る従業員が増える

当社に2021年度から2026年7月までに寄せられた問い合わせ2,644件のうち、用途が従業員送迎だったのは423件です。相談で多いのは、最寄り駅から数kmから数十km離れた立地で、自力の通勤手段を持たないスタッフをどう運ぶかという内容です。業種が記録されている422件では、製造業と物流・運送の2業種が282件で66.8%を占めます。工場や倉庫が駅から離れた場所に建つことの多い業種だからです。

通勤の手段が個人の車しかない職場では、マイカー通勤者の人数が、そのまま事故に遭う可能性のある人数です。自社で何人が車で通っているかを数えたことがないのであれば、まずその人数を数えてみましょう。

交代制勤務の職場では従業員が深夜と早朝に運転する

3交代制の工場からは、朝6時台の出勤と夜21時から24時の退勤に合わせて車を走らせてほしいという相談も届きます。業務の運転であれば交替の運転者を立てられますが、夜勤明けの従業員が眠気を抱えたまま自分の車で帰るのを、会社は止められません。

交代の時刻が決まっている職場では、7時から8時台と17時から18時台に従業員の出退勤が集中します。3交代制の職場では、その2つの時間帯に加えて、深夜と早朝にもまとまった人数が同じ道を動きます。マイカー通勤では、休憩を挟むかどうかも、体調の悪い日に運転を見送るかどうかも、従業員本人の判断に委ねられます。

勤務のシフト表と通勤手段の届け出を重ねれば、深夜と早朝に自分の車で帰る従業員が、何時に何人いるかまで分かります。深夜や早朝の眠気を抱える時間帯に時間帯にマイカー通勤をしている従業員が多い場合には、何らかの対策を検討した方がよいでしょう。

マイカー通勤中の事故で会社が問われる法的な責任

マイカー通勤中の事故で会社に請求が届くかどうかは、車の名義ではなく、その車が何のために使われていたかで分かれます。会社の責任を定める条文は2つあり、人身の損害だけを対象にするものと、業務での利用に絞るものとで、かかり方が違います。ここでは、被害者への賠償が会社に及ぶ条件と、従業員本人の治療費や休業の補償について説明します。

通勤だけに使っているマイカーでも会社が賠償責任を負う可能性がある

従業員名義のマイカーだから会社は関係ない、とは言い切れません。自動車損害賠償保障法第3条は、人にけがをさせたり死亡させたりしたときの賠償を、車の持ち主ではなく、その車を走らせる目的を持っていた者に負わせると定めています。

例えば、自社のマイカー通勤者に「ついでに」と何か会社の用事を依頼していた場合、事故発生時に会社にも賠償責任が発生する可能性があります。会社に賠償責任が発生するかどうかは条文だけで判断できるものではなく、個別の事情をもとに判断される点に注意しなければなりません。

事故を起こした際に「会社が車を走らせる目的を持っていた」と判断された場合には、従業員のマイカー通勤であっても会社に賠償責任が発生する可能性があることを知っておきましょう。

マイカーを業務に使わせている会社は使用者として賠償を負う

マイカーを業務にも使わせている場合は、相手の車や建物といった物の損害についても、会社が使用者として賠償を求められる可能性があります。民法第715条第1項が使用者に賠償を負わせるのは、従業員が事業の執行について第三者に与えた損害であるためです。自賠法3条と違い、対象は事業の執行についての損害に限られます。

業務にあたるかどうかは、日常の小さな頼みごとで変わります。通勤のついでに取引先へ寄ってもらう、荷物を積んで別の拠点へ運んでもらう、出勤前に備品を買ってきてもらうといった行動は、頼んだ側に業務をさせた自覚がなくても、その区間の運転は業務として扱われるため注意しなければなりません。

会社に賠償請求が届いた場合、事実の確認や聞き取り、保険会社や代理人とのやり取りに、担当者の時間が数か月にわたって取られます。担当する人は、あらかじめ1人決めておきましょう。

従業員本人の治療費と休業補償は通勤災害として労災から出る

被害者への賠償とは別に、事故に遭った従業員自身の治療費と休業中の補償についても考えなければなりません。従業員本人への補償は、会社の責任が認められるかどうかと関係なく、通勤災害として労災保険から支払われます。

届け出た経路をマイカーで走っている途中の事故も、通勤災害にあたります。労働者災害補償保険法第7条が、住居と就業の場所との間の往復を通勤と定め、通勤による負傷や死亡を保険給付の対象としているためです。

通勤から外れるのは、経路を逸れたり移動を中断したりした場合です。ただし日用品の買い物や通院のように、日常生活に必要な行為で寄り道した場合は、経路に戻った後の移動が通勤として扱われます。

通勤経路の届け出を受けていない会社は、事故が起きた場所が通勤の経路上だったのか、寄り道の途中だったのかを判断できません。通勤経路の届け出は、全員から集めておきましょう。

マイカー通勤のリスクを下げるために会社が整えること

会社の責任の線引きが分かっても、事故そのものは減りません。ここでは、マイカー通勤を認めている会社が社内で整えることについて説明します。

マイカー通勤を許可制にして任意保険の加入まで条件にする

マイカー通勤を明確に認めず黙認状態になっていると、誰がどの車でどの経路を通っているかを会社が答えられません。届出の様式には、車両番号と通勤経路、保険の加入状況を書く欄を設けましょう。年度替わりに全員から出し直してもらえば、届出の内容が毎年更新されます。

自賠責保険には加入義務があるものの、支払われる金額に上限があり、対象は人身の損害だけです。国土交通省の「自賠責保険・共済の限度額と補償内容」では、被害者1名につき傷害が120万円、死亡が3,000万円と支払限度額が示されています。限度額を超えた分と、相手の車や建物といった物の損害まで埋め合わせるためには、任意保険の対人賠償と対物賠償が必要です。

マイカー通勤を許可する条件に対人賠償と対物賠償への加入を設け、更新のたびに保険証券の写しを提出してもらいましょう。入社時の1回だけ提出するルールにすると、保険の契約が切れていても気づけません。通勤に利用する車には、業務の運転をさせない一文もあわせて規程に入れる価値があります。

従業員送迎を実施する

事故に遭う従業員を減らすには、車で通う人数そのものを減らす必要があります。

マイカー通勤を減らすために有効なのが、従業員送迎の実施です。例えばターミナル駅から工場までの間に送迎バスを運行すれば、公共交通機関と送迎バスで通勤できるようになる従業員も増えるでしょう。

従業員全員が利用できる送迎バスでなければならないと考える必要はありません。まずは効果の大きいルートを調査するところから始めてみましょう。

マイカー通勤の事故リスクは規程の整備と送迎の見直しで下げられる

従業員のマイカー通勤中に事故が起きると、会社が被害者への賠償を求められる場合があり、労災保険の手続きと欠員の穴埋めも同時に発生します。通勤のための車でも、業務のついでを頼んでいれば、会社に請求が届きます。

リスクを下げるには、「誰が、どの車で、どの経路を通っているか」を会社が把握することから始めましょう。許可制の規程と保険証券の確認を整えたうえで、通勤で運転する人数そのものを減らせないかを確認してください。駅から離れた事業所であれば、従業員送迎の実施も検討してみましょう。

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