2026.10.15
カテゴリ:運行管理
タグ:安全対策
交通事故の件数・死者数はどう変化した?減少の理由と送迎業務で取り組みたい安全対策
2025年の交通事故による死者は2,547人で、統計が残る1948年以降で最も少ない数になりました。ニュースで「過去最少」と聞き、なぜここまで減ったのかが気になった方もいるでしょう。送迎や社用車の運転を毎日抱える事業者にとっても、自社の業務にかかわる話題です。
交通事故が減った背景には、飲酒運転の厳罰化やシートベルトの着用、車の安全性能の向上、道路の整備といった対策の積み重ねがあります。この記事では、交通事故の件数と死者数の推移から、死者が減った理由、送迎業務で取り入れられる安全対策までを解説します。自社の安全対策を見直す手がかりとして役立ててください。
交通事故の件数と死者数の推移
日本の交通事故は、長い期間で見ると件数と死者数のどちらも大きく減っています。件数と死者数とでは最も多かった年が違うため、ここでは2つに分けて推移を解説します。
交通事故の件数は2004年の約3割まで減った
交通事故の発生件数は、最も多かった年の約3割の水準まで減っています。内閣府の「令和7年版交通安全白書」によると、発生件数のピークは2004年の952,720件です。同じ年の負傷者は1,183,617人で、件数とともに史上最悪の記録でした。
2025年の発生件数は287,023件で、前年より3,872件少ない数でした。内閣府の「令和8年版交通安全白書」では、負傷者も前年から5,887人減って338,508人になったことが示されています。負傷者が最も多かった2004年と比べると、約3割の水準です。それでも年間28万件を超える事故は今も起きており、送迎で毎日道路を走る事業所も、事故に遭う可能性は残っています。
交通事故の死者数は1970年の6分の1以下まで減った
交通事故で亡くなる人の数は、ピーク時の6分の1以下まで減りました。死者数が最も多かったのは1970年で、事故から24時間以内に16,765人が亡くなっています。2025年の死者数は2,547人で、警察庁の「令和8年版警察白書」では、警察庁が統計を持つ1948年以降で最少を更新したことが示されています。
亡くなった人に占める高齢者の割合は、今も高いままです。2025年の死者のうち65歳以上は1,423人で、全体の55.9%にのぼります。高齢の利用者を乗せて走る送迎事業所にとっては、死者の半数以上を占める年齢層を毎日運んでいることになります。
交通事故が減った理由
国は1970年に交通安全対策基本法を定め、5年ごとにつくる交通安全基本計画にもとづいて、事故そのものを防ぐ対策と、事故が起きても命を守る対策を進めてきました。交通安全白書が数字で効果を示しているのは死者が減った要因なので、ここではその要因を中心に、交通事故が減った理由を解説します。
飲酒運転の罰則が重くなった
飲酒運転による死亡事故が大きく減ったことは、死者が減った理由の1つです。内閣府の「令和8年版交通安全白書」では、飲酒運転による死亡事故が2002年以降、罰則が何度も重くなったことと、飲酒運転を許さない社会の気運が高まったことで大幅に減ったと示されています。
2025年の飲酒運転による死亡事故は125件で、前年の140件から減りました。内閣府の「平成25年版交通安全白書」も、飲酒運転などの悪質で危険性の高い事故が減ったことを、死者が減った主な要因に挙げています。社員が業務で車を運転する事業所では、飲酒運転を個人の心がけに任せず、会社として防ぐ仕組みを持ちましょう。
シートベルトを着ける人が増えた
シートベルトを着ける人の割合が上がったことも、死者を減らしてきました。内閣府の「令和8年版交通安全白書」は、着用者率の向上が、自動車に乗っていて亡くなる人の減少に大きく寄与してきたとしています。2025年の数字では、シートベルトを着けていなかった人の致死率(事故で死傷した人のうち亡くなった人の割合)は、着けていた人の約13.3倍でした。
ただし、近年は着用者率が伸び悩んでいます。2025年に自動車に乗っていて亡くなった人のうち、シートベルトを着けていなかった人は約4割を占めました。送迎車では、運転者が発車前に後部座席まで振り返り、乗っている全員の着用を確かめる手順を決めておくのがおすすめです。
事故の直前に車が出していた速度が下がった
車の速度が低いほど、同じ事故でも命が助かる可能性は高まります。内閣府の「平成25年版交通安全白書」は、事故の直前に車が出していた速度が下がったことを、死者が減った主な要因の1つに挙げています。
同じ白書によると、2012年の一般道路の事故では、運転者が危険に気づいた時点の速度が時速50km以下の場合、死亡事故になった割合は0.4%でした。時速80kmを超えると、その割合は32.9%まで上がります。送迎の運行表をつくるときは到着時刻に余裕を持たせ、運転者が急がなくても間に合う時間で組みましょう。
車の安全性能が上がった
車そのものの安全性能が上がったことも、死者を減らしてきた対策の1つです。内閣府の「令和7年版交通安全白書」は、1970年まで死者が増え続けた要因の1つに、車の安全性を確保する技術が未発達だったことを挙げています。平成25年版の白書が死者の減った背景として挙げる対策にも、車両の安全性の確保が含まれます。
近年は、事故そのものを防ぐ技術の普及にも力が入れられてきました。令和8年版の白書によると、国は衝突被害軽減ブレーキやペダルの踏み間違いによる急発進を抑える装置を搭載した「安全運転サポート車」の普及に取り組んでいます。送迎に使っている車がどの安全装置を搭載しているか、車検証や取扱説明書で把握しておきましょう。
信号機や歩道などの交通安全施設が整った
信号機や道路標識、歩道といった道路の環境の整備も、死者を減らしてきた対策に含まれます。内閣府の「平成25年版交通安全白書」は、死者が減った背景にある対策の1つとして、道路交通環境の整備を挙げています。令和7年版の白書によると、1970年まで死者が増え続けた時期は、信号機や道路標識などの交通安全施設が足りていませんでした。
最近は、住宅地の道路で車の速度を落とす対策にも力が入れられています。最高速度を時速30kmに規制する区域に、道路の段差や幅を狭めた部分を組み合わせる「ゾーン30プラス」は、令和8年版の白書によると2025年度末までに全国249地区で整備されました。送迎ルートに住宅地の細い道が含まれる場合は、ゾーン30プラスの区域がどこにあるかを運転者と共有しておくとよいでしょう。
交通事故が減った理由を送迎業務の安全対策に生かす方法
社会全体で死者を減らしてきた対策の中には、事業所が自社の送迎に取り入れられるものもあります。ここでは、送迎業務ですぐに始められる2つの安全対策を解説します。
運転の前後にアルコール検知器で酒気帯びを確認する
飲酒運転を会社として防ぐには、運転の前後にアルコール検知器で酒気帯びを確認する方法があります。道路交通法施行規則第9条の8は、乗車定員11人以上の自動車を1台以上、またはその他の自動車を5台以上使う事業所に、安全運転管理者を選ぶことを求めています。安全運転管理者は、運転しようとする運転者と運転を終えた運転者の酒気帯びの有無を、目視などとアルコール検知器で確認しなければなりません。
確認した内容は記録して1年間保存し、アルコール検知器はいつでも使える状態にしておく決まりです。警察庁の「安全運転管理者の業務の拡充等」によると、検知器を使った確認は2023年12月1日から義務になりました。例えば朝の送迎に出る前と夕方の送迎から戻った後に、点呼と同じ場で検知器を使い、結果を記録簿に書き込む流れが考えられます。自社の送迎車の台数と乗車定員が選任の条件にあたる場合には、安全運転管理者を選び、検知器と記録簿を用意するところから始めましょう。
衝突被害軽減ブレーキを搭載した送迎車を選ぶ
車の安全性能の向上を自社の送迎に取り入れるには、衝突被害軽減ブレーキを搭載した送迎車を選ぶ方法があります。衝突被害軽減ブレーキは、前の車や歩行者にぶつかりそうになったときに自動でブレーキをかけ、衝突を避けたり被害を軽くしたりする装置です。国土交通省は乗車定員10人未満の乗用車などへの搭載を義務付けており、国産の新型車は2021年11月、以前から作られ続けている車種は2025年12月から対象になりました。
義務化より前に作られた車には、衝突被害軽減ブレーキが付いていないものもあります。例えば古い年式の車を中古で導入し、長く送迎に使っている場合には、装置が付いていないケースも考えられるでしょう。車両の入れ替えやリースの更新のときには、衝突被害軽減ブレーキが付いていることを車選びの条件に入れておくと安心です。
交通事故を減らした対策は送迎業務にも取り入れられる
日本の交通事故は、件数が2004年の約3割、死者数が1970年の6分の1以下まで減りました。死者を減らしてきたのは、飲酒運転の厳罰化やシートベルトの着用、事故直前の速度の低下、車の安全性能の向上、信号機などの交通安全施設の整備といった対策の積み重ねです。
送迎業務でも、運転前後のアルコール検知器による確認と、衝突被害軽減ブレーキを搭載した車両の選択は自社で取り入れられます。運転者の確保や毎日の運行管理まで手が回らない場合は、送迎業務を外部に任せる方法も選択肢に入るでしょう。まずは自社の送迎車の台数と装備を確かめるところから始めてみてください。





























