2025.05.30
カテゴリ:安心/安全/教育
タグ:安全対策
高齢運転手の免許更新に必要な手続きは?返納判断のポイントも解説「75歳を超えた運転手の免許更新ってどうなるの?」「何を準備しておけばいいのかわからない」そんな不安を抱えていませんか。高齢運転手の免許更新には、認知機能検査や講習など、通常とは異なる特別な手続きが必要です。
この記事では、高齢運転手に免許更新時の特別な手続きが求められる背景や制度の仕組みを詳しく解説。さらに、認知機能検査や講習の内容、運転を続けるか返納するかの判断ポイントまでを網羅しています。
記事を読むことで、制度への理解が深まり、必要な準備と判断の基準が明確になります。雇い主として、安心・安全な運転環境を整えるための参考になるはずです。
高齢運転手の免許更新に特別な手続きが必要な背景
75歳以上の高齢運転手が免許を更新する場合には、特別な手続きが必要です。高齢運転手の免許更新に特別な手続きが必要な背景を詳しく解説します。
高齢ドライバーによる事故の社会問題化
高齢者による交通事故は、社会的な関心を集めています。特に死亡事故や重大事故の一部に高齢運転手が関与しているケースが目立ち、大きく報道されるケースも少なくありません。
こうした事例の背景には、加齢による判断力や反応速度の低下があります。特に高齢者に多いのが、ブレーキとアクセルの踏み間違いです。
75歳未満の運転者におけるブレーキとアクセルの踏み間違えによる事故の割合は0.5%であるのに対し、75歳以上の場合は7.0%と、14倍の割合で起きていることがわかります。
※引用:未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策について|内閣府
重大事故は、被害者だけでなく加害者自身やその家族にも大きな影響を及ぼします。そのため、制度の見直しや対策の強化が急務となり、認知機能検査や技能検査などが導入されました。
認知機能や身体能力の低下に備えるため
年齢を重ねると、誰しも身体的・認知的な機能に変化が生じます。これが運転に与える影響は無視できません。運転中には、瞬時の判断や正確な操作が求められるため、わずかな能力低下でも重大な事故に直結するリスクがあります。
たとえば、赤信号の見落とし、歩行者への気づきの遅れ、ハンドル操作のミスなどは、加齢による注意力や判断力の低下が一因です。免許更新時にこれらの能力をチェックすることで、本人の安全だけでなく、周囲の安全も確保できます。
高齢者の運転能力を評価し、安全な交通社会を維持するための前向きな制度といえるでしょう。
高齢運転手の免許更新に必要な手続き
高齢運転手の免許更新には、次のような手続きが必要です。それぞれ、詳しく解説します。
- 認知機能検査
- 高齢者講習
- 運転技能検査
認知機能検査
75歳以上の運転者は、免許更新時に「認知機能検査」を受ける必要があります。これは、記憶力や判断力が加齢によって低下していないかを確認するための検査です。
検査内容は、時間の見当識、記憶力、図形の認識力などで構成されており、所要時間は約30分です。各地の運転免許センターや警察署で予約制で実施され、受検料は標準で1,050円かかります。
この検査は、事故のリスクを減らす目的で導入されており、認知機能検査で「認知症のおそれあり」とされた場合には、医師の診断を受けなければなりません。認知症でないと診断されれば高齢者講習を受けて免許を更新できますが、認知症と診断された場合には免許の取り消し等が行われます。
高齢者講習
70歳以上のドライバーが免許を更新する際には、高齢者講習を受けなければなりません。講習は座学と実技を組み合わせたもので、2〜3時間程度かかります。
運転技能検査を受けた場合、高齢者講習の受講は不要です。高齢者講習に合否はなく、講習を受ければ免許を更新できます。
運転技能検査
75歳以上で一定の違反歴がある場合には、運転技能検査を受けなければなりません。
この検査は、実際の運転に近い形でコース走行を行い、交通標識の認知や適切なブレーキ操作などが確認されます。試験の合否により、免許更新の可否が判断される重要なプロセスです。
運転技能検査に不合格の場合、免許更新が認められないケースもありますが、再チャレンジも可能です。安心して受けられるよう、事前に教習所での講習を利用する人も増えています。
運転継続・免許返納を判断するためのポイント
運転を継続するか免許を返納するかは、以下のポイントを考慮して判断しましょう。それぞれ、詳しく解説します。
- 認知機能・判断力に問題はないか
- 身体能力に問題はないか
- 医師から指摘を受けていないか
- 家族や周囲からの助言を受けていないか
- 運転をやめることで生活にどの程度影響が出るか
認知機能・判断力に問題はないか
認知機能や判断力の低下は、事故リスクの増加につながります。次のような兆候が見られた場合は、運転の継続を再考するタイミングかもしれません。
- 道に迷うことが増えた
- 信号や標識の意味をとっさに理解できない
- 交差点での判断に時間がかかる
定期的な認知機能のチェックや専門機関での診断も判断材料になります。
身体能力に問題はないか
身体的な衰えも運転に大きく影響します。次のような傾向がある場合は注意が必要です。
- ブレーキとアクセルを踏み間違える
- 歩行時につまずきやすい
- 周囲の音に気づきにくい
視力や聴力、体力の低下が運転に影響することを自覚し、必要であれば医師の診断を受けましょう。
医師から指摘を受けていないか
持病や服薬の影響も見逃せません。認知症、てんかん、心臓疾患などの診断を受けている場合や、眠気やふらつきといった副作用のある薬を服用する場合には運転の見直しが必要です。
医師に相談し、運転の可否について客観的な判断を仰ぎましょう。
家族や周囲からの助言を受けていないか
周囲の客観的な声は、自分では気づきにくい変化を教えてくれます。例えば家族が同乗を拒む場合や、運転が危なかったと指摘されることがあれば真摯に受け止めましょう。
助言を感情的に捉えるのではなく、安全を守るための意見として尊重する姿勢が重要です。
運転をやめることで生活にどの程度影響が出るか
運転をやめた場合の生活面への影響も考慮すべきポイントです。例えば次のようなケースでは、返納してもそれほど影響を感じずに過ごせるでしょう。
- 週1回以下の運転頻度
- 公共交通や送迎で代替可能
- 買い物・通院が徒歩圏内またはバス利用で可能
多くの自治体では、免許返納者向けにバス・タクシー券の交付や割引制度を設けています。こうした支援を活用することで、不便を感じずに生活することも可能です。
高齢運転手の免許更新手続きまとめ
高齢運転手の免許更新には、特別な手続きや検査が必要ですが、それらは「制限」ではなく「安全を守る仕組み」です。運転手の能力を正しく見極め、安全に業務を継続できるかどうかを判断するための大切な材料です。
運転を続けてもらうかどうかは、身体や認知機能の状態に加えて、生活環境やご家族の意見、そして業務内容との適合性などを総合的に考慮する必要があります。雇用主としても、制度や支援策をうまく活用しながら、安全で無理のない形で働き続けてもらえるかどうかを見極めることが大切です。
高齢運転手の継続雇用について考える際には、本人の意向と状態を尊重しつつ、周囲の環境やリスクにも目を向けた判断が、安心・安全な業務運営につながります。